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第60回を記念して、プロトマニア『絵画鑑賞白熱講座』の全60テーマをご紹介します!(1-10)

 

はじめに

2014年3月、《これまで誰も教えてくれなかった》とサブタイトルをつけた絵画鑑賞講座が始まりました。場所は九段下にある都会の寺子屋・プロトマニア。とっても素敵な空間です。時の流れるのははやいもので、毎月1回のペースでやってきたこの講座も今月(2019年5月)で記念すべき60回目の講座となります。当初は『絵画鑑賞入門講座』という名前でスタートしたが、昨年3月、まる4年がすぎたことを契機に『絵画鑑賞白熱講座』と名を改めました。月1回とはいえ、大学4年間よりも長い講座になってきたことを踏まえての改称でした。それからまた1年以上がすぎました。今月のエゴン・シーレで60回目の講座となります。

記念すべき第60回目のテーマは《ウィーン世紀末、夭折の天才画家 エゴン・シーレ》ですが、これを契機にこれまでどんなテーマ、画家をとりあげてきたのか振り返ってみようと思い立ちました。60回のテーマを一挙に掲載してしまうとあまりにも長いので、まずは1から10回テーマをご紹介します。

 第1回 名画の条件って?

名画と言えば、誰でもまず思いうかべるのはこの絵ですね!

レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》を見ながら名画の条件を考えてみましょう。

1.完成度が高い。

これ以上描けない、描くと絵がこわれてしまうというギリギリのところまで描いてある。

2.すべてが調和していて、画面に破綻がない。

各要素があるべきところにある。→ジグゾーパズルですべてのピースが完璧にピタっと収まった感じを思い浮かべるとわかりやすいかも。

色の調子がずれていない。

どんなに強い色が使われていても、その色の調子が浮いていない。

ヴァルール(色価)に狂いがない。

色と形の関係に違和感がない。

絵画の画面の中では、色と形は別々に存在しない。

形が自然であれば、色も自然な色でなければならない。

自然界にないような色とその組み合わせであれば、形もそれに応じた形になっていなければならない。

マティスの場合 : 平塗りで独特な単一の色面 → 形もそれに応じたシンプルで独特な形

ボナールの場合 : 色彩が淡く複雑に混じり合っている → 形もシャープではなくかどのとれたフワフワした形。

3.見えないところ(陰の部分)をしっかり描いてある。

陰の部分が単なる闇(黒)ではなく、闇に沈んでいる物がちゃんと描いてある。そして、それがうるさくない。

4.デッサンがしっかりしている。

デッサンとはなにか?

単純には描写力を言う場合が多いが、もっと根本的なもの。絵の骨格のようなもの。人間で言えば体幹のようなもの。

自然の光と色を重視した印象派の中にあって、デッサンを重要視したドガの言葉。

《デッサンは形ではない。形の見方である。》  Le dessin n’est pas la forme. Il est la manière de voir la forme.

5.繰り返しがない。

一見同じようにみえるものがたくさんあっても。ひとつひとつ変えて描いてある。→ 単調にならない。

6.説明的でない。

=観念的でない。

画面の外にある固定的な観念を説明しようとするのではなく、画面の中に表現された物自体に発信力がある。

7.不思議感ある。

なにかわからない感じ、崇高な感じがする。

仮に完成度が高いと思われるど写実のリアリズム絵画であったとしても、すべてがわかりきったように(観念的)描いてあったのでは、現実をひき
ずりすぎていて崇高な感じはしない。単純に野暮ったい!

※現代のリアリズム絵画について

「描写力」と真の意味での「デッサン力」があるのとは違う。

描写力がある→あくまでもモチーフが主体になっていて、画家の目は従属的(モチーフあるいはモチーフを撮った写真を写す)

デッサン力がある→画家の側からの主体的な物の見方が提示されている。

名画の条件はいろいろあれど、「不思議感」があることは必須条件。

《好きな絵 &きらいな絵》と《いい絵 & 悪い絵》を峻別する!

「好き、嫌い」の鑑賞から→ その先の地平に行く絵画鑑賞法

 

 第2回 印象派 VS 美しすぎるサロン絵画

 

ウィリアム・ブグロー 《アモルとプシュケー》

美しすぎるサロン絵画

「過ぎたるは尚及ばざるが如し」というよりは、「美しい」という観念を描いた絵だからダメ!

サロン絵画にも魅力がある?

アンチ印象派として有名なサロン絵画の3巨頭はブグロー、カバネル、ジェロームの3人。

中でもブグローの筆力はすごい!なんだって描ける感じ。

印象派に攻撃された理由は?

つくりものの絵画にしか絶対的価値を認めなかったから。

つくりものの絵画とは、知的教養としての神話や歴史、宗教的なテーマ(さんざん描かれて、描かれつくした)を職人的技術で作りあげた絵画。

 第3回 印象派(その1)

タッチを消したサロン絵画とタッチで描いた印象派。

タッチこそは画家の主体性の発露。

 番外編:青木繁《海の幸》

青木繁が22歳の時に描いた傑作。青春の昂揚感みなぎる画面の迫力!

わずか数年後に没落の人生がまっているとは・・・青木繁の評伝は涙なしには読めません(青木を認めない黒田が憎らしくなる)。

青木繁の絶筆となった「朝日」 28歳で夭折した天才画家。意気軒昂な22歳の「海の幸」からわずか6年後の死。

25歳の時に父が亡くなって、家族に頼られるも、絵の天才青木に没落した実家を支える才はなく、借金と放浪の旅に死す。

「海の幸」の昂揚感、緊張感溢れる画面と比べると人生に疲労困憊した青木の疲れ果てた姿を彷彿とする画面と思いきや、

講座の参加者のみなさんからは「何か悟りを得たような穏やかな雰囲気いい」との高評価でした。

 第4回 印象派(その2)

印象派四天王、モネ、ルノワール、シスレー、ピサロそれぞれの画風の展開。

孤高のドガ、女性の印象派モリゾー、カサット、ゴンザレス。

講師の中尾がアート・ライフ時代に企画協力した《印象派の華 モリゾ、カサット、ゴンザレス展》

印象派の仲間で印象派のパトロン、カイユボット。代表作は《床削り》オルセー美術館蔵

印象派のコレクターとしても貴重な存在。1894年に45歳で亡くなったが、印象派コレクションをリュクサンブール美術館に遺贈。

 番外編:黒田清輝《湖畔》

日本洋画会のドン。

日本洋画の歴史に印象派とサロン絵画を折衷した外光派なるものを定着させたことへの評価はわかれる。

でも、近代日本の美術の刷新に貢献した功績は大とせざるを得ない。

そして、やはり、名作も多い。

 第5回 ポスト印象派

 強烈な個性がぶつかりあう時、ゴーギャンとゴッホ

ゴーギャン  《黄色いキリスト》

ゴッホ 《星月夜》

番外編:中村彝《エロシェンコ氏の像》

日本洋画史上の最高傑作のひとつ!

よろしければ、プロトマニアのブログもご覧下さい。

知識と自由の中尾流  

 

 第6回 《夏休み特別企画》ゴッホの真贋判定に挑戦!

よろしければ、プロトマニアの下記ブログをご覧下さい。

それは本当ですか?:ゴッホ編

ゴッホの贋作と言えば忘れられないのが小林英樹氏のゴッホ関連著作。

画家としての視点からゴッホの贋作を論じてなかなかの説得力です!

ゴッホの謎解明への情熱を感じます。

 

 第7回 ロートレックと世紀末のパリ

素描の魅力

ポスター芸術の誕生

展覧会プロデューサーとして最初に担当した《ポスター芸術の頂点 ロートレック展》のカタログ

ロートレックの全ポスターと主要な版画をまぢかに検分できたのはビックリするほど貴重な体験でした。

もう覚えている方は少ないと思いますが、京都国立近代美術館で開催されていた《ロートレック展》の最終日にフランス、アルビのロートレック美術館から借りていた《マルセル》という小品が盗難にあいました。1968年12月のことです。幸い8年後に作品は出てきましたが、犯人逮捕にいたらないまま時効を迎えたという不可解な事件です。

このマルセル盗難事件にインスピレーションを得て書かれたのが、高樹のぶ子さんの《マルセル》。

2011年1月1日〜12月31日まえ、毎日新聞の朝刊に連載されました。

純文学系の高樹さんにはめずらしい、いわゆるアートミステリー小説ですが、さすがに人物の造型、京都の街並みの描写がすばらしく、アートミステリー小説のイチ押しです。

 第8回 ラファエル前派 I(ロセッティ、ハント、ミレイ)

ミレイのオフィーリアがすごい!

 

 第9回 ラファエル前派 II

ウォーターハウスってすごい画家知ってる?

ウォーターハウス 《シャロット姫》

ウォーターハウス  《聖セシリア》

ウォーターハウス  《オフィーリア》

ちなみに、ジョン・コリアという画家もいます。《ゴダイヴァ夫人》はなかなかの傑作です。

 

ゴダイヴァ夫人(Lady Godiva)は11世紀イングランドの女性。

夫の圧政をいましめるために町を裸で行進したそうです(伝説)。

とにかくこの絵の印象は強烈です。

美しいゴダイヴァ夫人の裸形に目を奪われがちですが、それよりも馬が身にまとう緋色の布の鮮烈さ!

馬の描写も素晴らしい!

右の背景の建物の表現にもう少し重厚さがあったら・・・馬と布がこれだけ描けるのだから。

ちなみに、日本でも人気のベルギーのチョコレートメーカー《ゴディバ》のブランド名はこのゴダイヴァ夫人からきているそうです。ゴダイヴァが英語読み、ゴディバはフランス語読みですね。そう言えば、ゴディバのロゴは馬に乗る裸の女性です。

 第10回  ボッティチェリ 《ヴィーナスの誕生》と《春》

《ヴィーナスの誕生》を描いた作品はたくさんあるけど、やっぱりこの絵が一番!

複雑な色調による「絵の厚み感」がすごい!やはり、こうごうしい神々の世界。

そして、恥じらいのポーズが奥ゆかしい。

それに比べて、19世紀後半サロン絵画の巨匠カバネルの《ヴィーナスの誕生》なまめかしく、挑発的!

そして、単調。「美しい」裸の女性が描ければOK?

ヴィーナスの誕生を祝福するクピド(キューピッド)も邪魔といえば邪魔。

《春》はイタリア語でプリマヴェーラ (Primavela)。

主役がわかりにくい絵ですが、主役はやっぱり中央のヴィーナス。

《ヴィーナスの誕生》と違ってこちらは着衣。

ちょっと高い位置取りでかろうじて主役の座を保っていますが、首を傾げてちょっとたよりなさそうですね。

一瞬主役の座を右から3番目の花の神フローラに奪われそうですが・・・

ヴィーナスの頭上にはいたずらな愛の神クピドがいます。クピドはヴィーナスの息子ですからね。

次回は11回から20回のテーマをご紹介します。お楽しみに!

 

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