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ゴッホ展(上野の森美術館)のコンセプトから《ピンクの桃の木(モーヴの思い出)》を連想したこと。

ただいま東京、上野の森美術館でゴッホ展が開催中です。(2019年10月11日〜2020年1月13日)

ゴッホ展の公式サイトはこちらから

この展覧会ではゴッホの人生を変えた2つの出会いと題して、オランダ・ハーグでのハーグ派、フランス・パリでの印象派との出会いをテーマにしています。これらの出会いを経て南仏アルルに行ったゴッホはわずか2年あまりの間にわたしたちが知る《アルルの跳ね橋》、《ひまわり》、《夜のカフェテラス》、《星月夜》など多数の傑作をものしていきます。

ゴッホは1888年2月20日にアルルに到着しました。アルルの澄んだ空気と明る色彩に感動したゴッホは、ほどなく《アルルの跳ね橋》を制作します。そして春の訪れとともに様々な果物の花が咲き乱れる果樹園のシリーズを描き始めますが、その中に《ピンク色の桃の樹(モーブの思い出)》という有名な絵があります。

ピンク色の桃の樹
(モーヴの思い出)
73 x 60 cm 1888年
オランダ、クレーラー=ミューラー美術館

 

ところで、この絵のタイトルのかっこの中「モーヴの思い出」ってなんでしょう?

画面左下のサインの上に「Souvenir de Mauve」とフランス語が書かれていますが、この訳が「モーヴの思い出」です。

実はこれ、ゴッホの従姉妹の夫の名前なんですね!要するにゴッホの義理の従兄弟。ゴッホがオランダやイギリスを転々として落ち着かない生活をしていた時に、オランダのハーグで面倒を見た人です。

アントン・モーヴ(オランダ語ではマウフェ 1838-1888年)はゴッホより15歳年長で、27歳のゴッホが彼を頼った時はすでにハーグ派の主要画家として活躍していました。

浜辺の朝の乗馬
1876年  45 x 70 cm
アムステルダム国立美術館

 

当初、モーヴはゴッホに油彩や水彩の手ほどきをしたり、画家サークルに紹介したりと親切に面倒をみました。しかし、身重の娼婦シーンとの同棲などゴッホの奇矯な行動のせいかだんだん縁遠くなってしまいました。しかし、ゴッホはその後もモーヴに対して尊敬と感謝の念をいだき続けていたようです。

1888年3月末、ゴッホがこの《ピンク色の桃の樹》を描き終えた日の夕方、妹からモーヴが2月に亡くなったことを知らせる手紙が届きました。そしてゴッホはこの絵をモーヴに捧げることに決めたのです。

ゴッホのテオ宛の手紙(1888年4月1日)によると、ゴッホはこの絵に《モーヴの思い出 ヴィンセントとテオ Souvenir de Mauve  Vincent & Theo》と署名しました。そしてテオさえよければその形でモーヴ夫人に送ろうと提案しています。ただよく見ると、現在のこの絵にはヴィンセント(Vincent)としか署名されていません。おそらくテオに言われてゴッホがテオの名前は消したと推測されています。《絵に物語あり》ですね!

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