《ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント》(東京都美術館)から♪♪♪
《サン=レミの療養院の庭》に続いてご紹介するのは《善きサマリア人(ドラクロワによる》です。
善きサマリア人(ドラクロワによる)
1890年5月 油彩/カンヴァス 73 x 59.5 cm
クレーラー=ミュラー美術館
世間を騒がせた《耳切事件》のあと、アルルに居場所のなくなったゴッホは郊外のサン=レミにある精神療養院で1年ほどの療養生活を送ります。
そこでゴッホは特別に絵を描く部屋を与えられていたとは言え、自由に敷地外に出て絵を描くことはできませんでした。
そんなこともあって、サン=レミ時代の彼はミレー、ドーミエ、レンブラント、ドラクロワなどの模写を多く制作しています。
ただし、もとになるのは、白黒版画による複製です。したがって、色彩に関してはゴッホが即興で想像して彩色をしています。
ですから、この《善きサマリア人》もオリジナルのドラクロワの色彩とゴッホの色彩とでは相当違うはずです。
ということで、ドラクロワの《善きサマリア人》の色彩とゴッホ彩色とを比較してみると面白いかも知れませんね。
いかがですか?
ドラクロワの絵では暴漢に襲われて傷ついた旅人を救うサマリア人の服の赤色が背景の緑との補色対比でいかにも鮮やかです。
一方、ゴッホはサマリア人の服を黄色にしています。そして、傷ついた旅人の服を青にし、背景を青紫色にして補色の効果を演出しています。
ドラクロワは緑と赤、ゴッホは黄と青紫と異なりますが、補色の組み合わせの効果(補色コーデ)という点ではゴッホの模写は完全にドラクロワへのオマージュになっています。ドラクロワの巧みな補色の使い方を称賛していたゴッホの面目躍如ですね。
ところで、ドラクロワとゴッホの絵では左右が逆になっていますよね。これは、ゴッホが見た白黒版画は左右逆版で刷られていたからなんですね。
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