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絵画鑑賞の力がつけばイッキ描きの絵の良さがわかるというお話

イッキ描きとは何か?

イッキ描きとは耳慣れない言葉ですね!それもそのはず、「イッキ描き」とは私(Kuma)が敬愛する異色の画家、菊地理画伯が自身の制作方法を形容して考案した造語です。要するに、自然や裸婦、花や静物など、モチーフを目の前にした時の感動を一気呵成にカンヴァスに定着させる作画態度です。身も蓋もない言い方をすれば超速描きです。

イッキ描きは難しい

ただ、このイッキ描き、言うは易く行うは難しです。短時間で描きあげたものが、ちゃんと絵になっていないといけません。そして、作者の感動が伝わってこないとだめです。そのためにはとにかくたくさん描かなければなりません。描いて描いて描きまくる。菊地画伯はこれまでに5万枚の油絵を描いてきたそうです。

では、絵になっているとはどういうことでしょうか?

絵になっているとは?

ヴァルール(色価)があっている。

一番大事なことはヴァルール(色価)があっていることです。ヴァルールなどというと堅苦しくてわかりにくいですが、画面の色に乱れがないということです。写実的な絵であれば、遠くの物が遠くに行って、近くの物は近くに出てきているという関係性が色でちゃんと表現できていりうことです。写実にこだわらない絵であれば、色のトーンに乱れがないこと。画面から生の色が飛び出したりしていないということになります。

絵の具がカンヴァスにしっかりとついている。

次に大切なのは、絵の具が画面にしっかり定着していること。いわゆる、絵の具がキャンバスにしっかり付いているかどうかです。ヴァルールがあっていて、絵の具と溶き油の調合がうまくいっていれば、この「カンヴァスに絵の具がしっかりついている」状態が生まれます。

筆に勢いがある。

イッキ描きの魅力はなんと言っても筆勢(ムーヴマン)です。もし、筆に勢いがあってなおかつ静寂が描かれている絵があったらそれは名作かも知れません。

そして、絵になっているという基礎条件にプラスして下記の条件を満たしていればいい絵ということになります。

いい絵の条件とは?

説明的ではない

絵は説明ではありません。極端に言えば、そこに何が描かれているかはどうでもいいのです。何が描かれているかはわからなくても、色と線と筆勢の効果が見る人を心地良くさせてくれる、何かはわからないけれど感動の波動が伝わってくればそれがいい絵ということになります。いい絵というのは天地を逆さまにしてもいい絵です。

カンディンスキーが外出から帰ってきて薄暗いアトリエに素晴らしくいい絵があるのを見つけて、誰の絵がおいてあるんだろうと思って近づいたら、自分の絵が逆さまになって置かれていた、そこから彼が抽象画を描くことになったというエピソードは示唆的ですね。

絵画の本質を語ったモーリス・ドニのあの有名な言葉もこの辺の事情を端的に説明してくれます。

絵画は《軍馬や裸婦や何らかのエピソードの場面である前に、本質的に、一定の秩序で並べられた色彩で覆われた平坦な表面である》。

想像力を刺激してくれる

説明的でないことからの派生効果ですが、見る人の自由な想像力を刺激するような表現が散りばめられていることも重要です。例えば、第一回印象派展に出品されたモネの「キャピュシーヌ大通り」を批判したルイ・ルロワというジャーナリストがシャリヴァリ紙に書いた次の戯文調の記事は示唆的です。

「あの画面の下の方にたくさん見える黒いポチポチはいったい何を表しているのかね?」
「あれは、町を歩いている人々ですよ」
「なんだって!だったら私がキャピュシーヌ大通りを歩いていると、あんな風に見えるの
というのかね・・・なんと馬鹿なことを!」

現代の私たちには画面の下の黒いポチポチは人にしか見えません!でも、説明的なサロン絵画に染まっていた当時の人々には黒いポチポチを群衆だと想像力を働かせて見る眼はありませんでした。

モネ キャピュシーヌ大通り  1873-74年

印象派の時代から150年もたった現代に生きる私たちは、もっともっと想像力を働かせて絵を見ることができるはずです。私の絵画鑑賞講座では皆さんの想像力をかきたてることを一番大切にしています。

この講座の更に詳しいコンセプトはこちらを御覧ください。

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