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2022年8月31日 さよなら《アンナミラーズ》!
外国風の可愛らしい制服とホームメイドパイでバブル時代に人気を博したレストランチェーン《アンナミラーズ》。
「最近見ないな」と思っていたら、最後の店鋪・高輪店が8月31日を持って営業を終了したことがニュースになっていました。
品川駅西口の再開発に関連して国土交通省から移転を要請されたことで閉店の決定となったようですが、これも時代なんでしょうね。これで《アンナミラーズ》は50年の歴史に幕をおろしたことになります。
アンナミラーズ高輪店 ~井村屋グループ(株)ニュースリリース(2022.6.14)より
1973年、アンナミラーズ開業!
1973年、アメリカンフードとホームメイドパイを売りにしたアンナミラーズ1号店が青山に出店。
ちょうど高度成長期が終わった頃で、アメリカはまだまだ憧れの国でした。
そう言えば、村上春樹さんの初期作品にもその頃に発表された《1973年のピンボール》という小説がありましたね。
ピンボールゲーム機といえば、スーパーマンなどアメリカンヒーローのイラストを思い出します。
村上春樹さん自身が早稲田大学在学中からジャズ喫茶を経営していたということで、やっぱり当時は
アメリカ志向が強かったんでしょうね!
アンナミラーズは「ようかんの井村屋」が経営していた!
ところで、アンナミラーズの経営はあの《羊羹の井村屋》だって知ってました?
井村屋と言えば、ようかんとかあずきバーなど「餡子(あんこ)」のイメージで、なかなかアメリカンホームメードパイとは結びつかないですよね。
1973年当時の井村屋製菓(現・井村屋グループ)社長の井村二郎氏が、サンフランシスコにあったアンナミラーズと提携し、日本での展開が始まったそうです。ちなみにアンナ・ミラーというのは創業者の祖母の名前で、「おばあちゃんが作る料理」がコンセプトでした。
「アンナミラーズのアンはあんこのあん」という都市伝説のような噂があるようですが、これは全くの間違いだそうです。
VUCAの時代にマッチする井村屋の経営理念!
なかなか想像がつかない羊羹の井村屋とアンナ・ミラーズのマッチングでしたが、井村屋の企業理念と事業展開は先の見えないVUCAの時代にピッタリな気がします。
井村屋の創業は1896年(明治29年)に遡ります。125年もの歴史があるんですね!
もともと和菓子の老舗だったんだろうと想像しますが、全く違います。井村屋グループ株式会社の企業情報によれば、創業者の井村和蔵氏は米相場で失敗した後、なんとなくできそうだという直感だけを頼りに、全く経験のなかった羊羹の製造販売に乗り出します。驚きますね!
場所は三重県飯南郡松坂町(現、松阪市)です。
見よう見まねで羊羹のもとになるタネを作ったまではよかったのですが、それを流し込んで固める型のことを全く考えていませんでした。そこで和蔵氏はその地方ではどこの家庭でも普通に使っていた春慶塗の山田膳を羊羹のタネを流し込む型に利用することを考えつきます。これが功を奏します。春慶塗の表面は滑らかで羊羹の型抜きがしやすいう上に量り売りもできるということで、ヒット商品となります。《山田膳流しようかん》の誕生です。
山田膳流しようかん(写真:井村屋HPより)
見方によっては、直感に頼った行き当たりばったりの行動ともとれる和蔵氏のこの創業秘話はですが、さらに見方を変えれば、まさに今、大注目のアート思考のビジネスへの応用の好例だという気がします。スティーヴ・ジョブスが「Iphone」ができると確信して突き進んだように、和蔵氏はなんの経験もなく「できる!」と直感した「羊羹作り」に邁進しました。そして肝心の型のことを考えていなかったという大チョンボも「発想の転換」で乗り越え、むしろ結果としてアドバンテージに変えることに成功しています。
この和蔵氏の直感に基づく「なんとかなる、なんとかする」思考と行動は不安定で変化が激しく先の見えないVUCA(Volatility,. Uncertainty, Complexity, Ambiguity)の時代を勝ち抜くために必要な行動指針のひとつとなるのではないでしょうか。
和蔵氏は「山田膳流しようかん」のあとの10年間で、「うずまき」「とらまき」とヒット商品を作り出し、「井村屋」の礎を築きます。
とらまき(写真:井村屋HPより)
和蔵氏のこの創業者スピリットはその後も受け継がれ、今では井村屋と言えば羊羹とは全く結びつかない「肉まん、あんまん」も代名詞になるほどの多様化した商品開発の原動力になっています。
アンナミラーズの魅力の一つでもあったピンク、えんじ、イエローの可愛い制服も今思えば、メイドカフェの先駆けのような気がしてきます。
アンナミラーズの制服(井村屋グループ提供)
まとめ
国内最後のアンナミラーズ閉店という衝撃的なニュースに端を発し、125年前の井村屋創業者和蔵氏の場当たり主義とも言える経営行動がもしかしたらアート思考に通じて、先の見えないVUCAの時代をおおらかに生き抜く示唆に富んでいるのではないかというお話をさせていただきました。
井村屋グループ浅田剛夫会長は「撤退ではありません。We shall returnと言いたい」とおっしゃっています。
どんな形で新生アンナミラーズが私たちの前に登場してくるのか、楽しみ待ちましょう!
最後に漫画家江口寿史氏の素敵なTwitter投稿をご紹介させていただきます。
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今月末の高輪店の閉店でその歴史にピリオドをうつアンナミラーズ。アンナミラーズはぼくにとっては80年代の吉祥寺の象徴でした。いろいろ想いがあり過ぎて一言では語れませんが、この絵を感謝の言葉の代わりにさせていただきます。アンナミラーズありがとう。 pic.twitter.com/rmyZvN2HoH
— 江口寿史 (@Eguchinn) August 3, 2022
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