ブログ

《メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年展》の目玉作品カラヴァッジョの《音楽家たち》に寄せて


カラヴァッジョ(1571 – 1610)
《音楽家たち》
1597年   油彩/カンヴァス 92.1×118.4cm
メトロポリタン美術館

今月13日に大阪市立美術館で始まった《メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年》のハイライト作品のひとつがこの絵、カラヴァッジョの《音学楽家たち》です。この展覧会は東京では来年の2月9日から国立新美術館で開催されますが、カラヴァッジョは彼の作品が1点でも展覧会に加われば目玉になるという大変人気のある画家です。

カラヴァッジョはミラノ生まれです。
13歳から徒弟として画家の道にはいり、母親の遺産を相続したのを機にローマに出ます。ここで描いた《いかさま師》(1595年、キンベル美術館、3枚目)がデル・モンテ枢機卿の目にとまり彼が住んでいたマダマ宮殿に寄宿することになります。ちなみに、マダマ宮殿は現在ではイタリア上院の建物になっています。


《いかさま師》
1595年頃 油彩/カンヴァス 94.2 x 130.9 cm
キンベル美術館 アメリカ

デル・モンテ枢機卿は音楽や絵画などの芸術を愛していたので、マダマ宮殿には若い音楽家や画家を大勢寄宿させていました。

この絵はそんな若者たちが開いた演奏会の1シーンのようです。リュートを持った中央の少年は左手でペグを持っていますから、調弦中のようですね。ということは、演奏の出番を待っているところなんでしょう。右側の背中を見せている少年は熱心に何かを読んでいますが、おそらく楽譜だと思われます。右から二人目はカラヴァッジョの自画像だと言われています。彼が手に持っているのは黒の角笛のようです。左後方の少年の背中には黒い羽があります。キューピッドのようですね。ということは愛の象徴?意味深ですね。

ところで20代のカラヴァッジョの風俗画には美少年が頻繁に登場します。例えばルーヴル美術館所蔵の《女占い師》ですが、右側の羽飾りのついて黒い帽子をかぶっている人物が女占い師だと思っている人も多いようです(私もそうでした)が、女占い師は左側の女性で右側の人物は男性です。


《女占い師》
1598-99年頃 油彩/カンヴァス 99 x 131 cm
ルーヴル美術館

モデルはカラヴァッジョの舎弟で彼と一緒にマダマ宮殿に寄宿していたマリオ・ミンニーティという画家です。彼は豊頬(ほうきょう)の美少年としてカラヴァッジョの絵によく登場しますが、見た目とは裏腹に凶暴な性格でカラヴァッジョと同じく後に殺陣を犯しています。

とにかく20代のカラヴァッジョは美少年をモデルにした絵をたくさん描いています。


《リュート弾き》
1595年頃 油彩/カンヴァス 94 x 119 cm
エルミタージュ美術館

この絵のモデルはやはりマダマ宮殿に住んでいたスペイン人のカストラート(去勢した男性歌手)のペドロ・モントーヤだと言われています。


《バッカス》
1595年頃 油彩/カンヴァス  95×85 cm
ウフィツィ美術館

頭にぶどうの葉や実をつけてしどけないポーズをとるバッカス。
モデルが誰かははっきりしていませんが、豊頬の少年マリオ・ミンニーティの可能性もあるような気がします。

【広告】

あなたも、大人の対話型絵画鑑賞を気軽に楽しんでみませんか?
講座の開催スケジュール(プロトマニア)

講座の開催スケジュール(vts-platform)





#メトロポリタン美術館展 #西洋絵画 #カラヴァッジョ #大阪市立美術館 #国立新美術館新美術館 #音楽家たち #イカサマ師 #キンベル美術館 #女占い師 #ルーヴル美術館 #絵画鑑賞 #対話型鑑賞  

 

ピックアップ記事

  1. ゴッホ展(上野の森美術館)のコンセプトから《ピンクの桃の木(モーヴの思い出)》を…
  2. 第60回を記念して、プロトマニア『絵画鑑賞白熱講座』の全60テーマをご紹介します…

関連記事

  1. ブログ

    《ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント》ハイライト作品紹介(6)《サン=レミの療養院の庭》

    《ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント》(東京都美術館)から♪…

  2. ブログ

    SOMPO美術館 《ゴッホと静物画》展から ゴッホの《靴》について

    東京、西新宿のSOMPO美術館で開催中の《ゴッホと静物画》展が好評のよ…

  3. ブログ

    【対話型鑑賞】ファシリテーターが一番成長する!

    いつも様々な講座にご参加いただきありがとうございます。7月の対…

  4. ブログ

    《みちのくいとしい仏たち》展、オススメです!

    《みちのくいとしい仏たち》展、オススメです!みなさん、こんにち…

  5. ブログ

    エドゥアール・マネ  《草上の昼食》

    今日の作品エドゥアール・マネ(1832 - 1883)《草上の…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

スポンサーリンク

スポンサーリンク

  1. 講座開催のお知らせ

    【l講座のお知らせ】国際美術展のプロと対話型で学ぶ《鑑賞のための美術史》(第6回…
  2. ブログ

    アンナミラーズ閉店で知った井村屋のアート思考的経営方法
  3. ブログ

    アートミステリー小説 私的おすすめ 《楽園のカンヴァス》 原田マハ著
  4. ブログ

    イベント紹介:対話型鑑賞のこれまでとこれから
  5. ゴッホ 種まく人

    ブログ

    《ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント》ハイライト作品紹介(3)《種まく…
PAGE TOP