ギュスターヴ・モローは1826年にパリで生まれて、1898年に72歳でパリで亡くなりました。
モネよりは14歳上、ピサロとは4歳しか違いません。
モローは印象派とほぼ同時代に活躍しましたが、自然を対象とした印象派とはまったく違った作風で、神話や聖書に題材を得て、人間の内面を反映した幻想的な作品を描き続けました。
その中でも有名なのが、オルセー美術館にある《出現》というタイトルの絵です。
モロー 《出現》 水彩/紙 106 x 72.2 cm オルセー美術館
妖艶な踊りと引き換えに洗礼者ヨハネの首をヘロデ王に望んだ《サロメ》の主題はルネサンスの時代から、ティツィアーノやカラヴァッジョなど歴代の巨匠たちが描いていますが、そのどれもが洗礼者ヨハネの首はお盆にのせられた状態で描かれています。
ティツィアーノ 《洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ》 1515年頃
油彩/カンヴァス 89.5 x 73 cm
ドーリア・パンフィーリ美術館 ローマ
カラヴァッジョ サロメ 1607 – 10年 油彩/カンヴァス 91.5 x 106.7 cm
ロンドン・ナショナル・ギャラリー
クラーナハ 洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ 1530年代 油彩/87 x 58 cm
ブダペスト国立美術館
一方、モローの絵では洗礼者ヨハネの首は空中に《出現》しています。
ヨハネの首がお盆にのせて運ばれてくるという即物的な表現ではなく、サロメにだけ見える幻影として描いたところに、モローのオリジナリティ=象徴主義があると言えます。
ところで、モローはこのサロメの場面を先ほどのオルセーの《出現》以外に複数のヴァリアントで描いています。
出現 1876年 油彩 ギュスターヴ・モロー美術館 パリ
この作品はオルセーの《出現》と共に、1876年のサロンに出品され高評価を得ました。
出現 1876年頃 油彩 フォッグ美術館(ハーヴァード大学)
ヘロデ王の前で踊るサロメ 1876年 油彩
アーマンド・ハマー美術館 ロサンゼルス
踊るサロメ(入墨のサロメ・刺青のサロメ)
1876年 油彩 92 x 60cm
ギュスターヴ・モロー美術館、パリ
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