東京都美術館の《ゴッホ展》(12月12日まで)雑感
《ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント》(東京都美術館)
もうすぐ東京展終了なので、その前に展覧会の振り返りをしてみました。
今後の巡回
東京都美術館で好評開催中のゴッホ展もいよいよ今度の日曜日で終了です。
でも、ご安心ください。12月23日からは福岡市美術館で開催されます。(2月13日まで)
そのあと2月23日からは名古屋市美術館へ巡回します。(4月10日まで)ということで、来年の春までゴッホ熱はまだまだ続きますね。
展覧会の特徴(コンセプト)
コレクターに光をあてた展覧会
今回のゴッホ展の特徴は、ゴッホ美術館と並ぶゴッホの大コレクションを誇るオランダのクレラー=ミュラー美術館の創始者ヘレーネ・クレラー=ミュラーさんに光を当てたことです。
ヘレーネはゴッホの芸術に魅了され夫で実業家のアントンと共にゴッホの作品を収集し、90点をこえる油彩画と180点に及ぶ素描の一大ゴッホ・コレクションを築き上げます。このコレクションがクレラー=ミュラー美術館の基になったわけですが、この美術館はファン・ゴッホ美術館の次にゴッホの作品を所蔵する稀有な美術館として世界中から高い評価を得ています。
コレクターに焦点をあてた展覧会としては2018年の《ビュールレ・コレクション展》(国立新美術館ほか)、2019年の《コートールド美術館展》(東京都美術館ほか)が記憶に新しいところですが、旧くは1994年に国立西洋美術館で開催され107万人を動員したバーンズ・コレクション展などという超ブロックバスター展もありました。
展覧会のハイライト(目玉)作品
今回の展覧会のハイライトは《夜のプロヴァンスの田舎道》です。
ところで、この作品は以前は《糸杉と星の見える道》というタイトルでした。
16年前の2005年に《ゴッホ展》(東京国立近代美術館、国立国際美術館で開催)に出店された時も《糸杉と星の見える道》というタイトルでしたので、この間にタイトルが変わったということのようです。
クレラー=ミュラー美術館のサイトでも英語では《Country Road in Provence by Night》とう表記になっています。
個人的な推測ですが、この絵を昼の情景と思って、それなのに星や月が出ている???という疑問を抱く人がいることから、あえてタイトルに「夜」という言葉を入れてタイトルを変更したのではないかという気もします。どうなんでしょうか?
それとももっと具体的な学術的発見でもあったのかな・・・個人的にはカタログとかにそのあたりの説明があってもいいような気もしました。
それはさておき、クレラー=ミュラー美術館と言えば、誰もが知っている《夜のカフェテラス》や《アルルの跳ね橋》があるのに・・・という気もしますが、美術館の改修などのタイミングでもなければ、そこまでの出展を期待することはできませんよね。
追加のハイライト作品(?)
目玉作品の不足を補うためか、ゴッホ美術館所蔵の《黄色い家》が出展されていましたが、ヘレーネさんのコレクションというコンセプトと関係なく「取って引っ付けた」感が否めない気がしました。
せっかくヘレーネさんに光を当てた展覧会なのに、そのコンセプトが弱められてしまったような・・・まあ、ゴッホの名作を1点でも多く見らたという点では良かったですけど。
この展覧会のコンセプト以外の特徴
クレラー=ミュラー美術館のゴッホ・コレクションの特長のひとつに素描が多いというのがあります。今回の展覧会でも素描が数多く展示されていました。これは良かったですね!
一般的に、素描は会場効果としては弱いのですが(おまけに紙の作品なので作品保護のため会場がとても暗くなっていて作品が見にくい)、じっくり見るとが画家の思考や技術の進歩などが如実に見えてきます。
まとめの感想
東京展の終わりに感じる私の個人的な感想は、この展覧会でゴッホのまとまった傑作、あるいはこの1点と言う超代表作を見て圧倒的な感動を得るという経験はできないけれども、今までほとんど気に留めていなかったゴッホの作品や初期の素描を通して、「画家になる」というゴッホの思考の過程とその実践の試行錯誤をたどることによってゴッホをより身近に感じることのできる滋味深い展覧会だなというものでした。
あと、アムステルダムにあるゴッホ美術館と違ってクレラー=ミュラー美術館はオランダに行ってもゴッホ美術館のようにアムステルダムにあるわけではなく、なかなか訪れる機会がないと思いますので、日本でクレラー=ミュラー美術館所蔵の作品を見ることができるのは、本当にありがたいと思いました。
東京で見逃したみなさん、頑張れば福岡か名古屋でこの展覧会を見ることができますよ!
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今回のゴッホ展についての投稿の中で最も多くのリアクションがあった作品です!
ゴッホのひまわりと同じく全体が黄色の作品なのが印象的だったのかしら・・・
レモンの籠と瓶
1888年5月 油彩/カンヴァス 53.9 x 64.3 cm
クレー=ラー=ミュラー美術館美術館
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