昨日のブログでご紹介したアートミステリー小説私的ランキング第1位《マルセル》(高樹のぶ子著)について、もう少し絵画的インフォメーションをお伝えしたいと思います。ちなみに、この小説のタイトル《マルセル》はロートレックの作品の題名です。
絵画好きで展覧会を生業としてきた私は、アートをテーマにした小説をときどき読むことがあります。
ほとんどの場合は贋作がテーマとなっています。この手の本は読んでいる最中はそれなりに面白いのですが、読後には何も残らないのが常です。エンターテインメントだからそれで十分といえばそれまでですね。
そんな中、なぜか芥川賞作家の大御所とも言える高樹のぶ子に「マルセル」という絵画ミステリー小説があります。
この小説は1968年12月、京都国立近代美術館で開催中のロートレック展から「マルセル」という絵画が盗まれたという前代未聞の事件を題材にしています。実際の事件は7年で時効が成立し、直後に絵は出てきたものの犯人はつかまっていないというなかなかに謎の多い事件でした。
小説はひょんなことから真犯人を捜すはめになった女性新聞記者が主人公でストーリーが展開します。もちろん贋作も絡んできます・・・
話の展開はさておき、さすが高樹のぶ子さんだけあって登場人物の造形力が素晴らしく、アートミステリー的な他の作品とは一線を画しています。
以下、小説のタイトルとなっている《マルセル》についての情報です。
まず、日本の展覧会で盗難にあったロートレックの絵はこの絵です!
マルセル(Marcelle) 厚紙に油彩で描かれています(1894年作)。大きさは46.5 x 29.5 cmですから、すごい小品というわけでもありませんね。額縁もありますから、ひょいと盗める大きさではないように思われますが・・・ちなみに所蔵はフランス、アルビのトゥールーズ・ロートレック美術館です。
マルセル(Marcelle)というのは描かれた女性の名前です。
モデルは女優で歌手、ダンサーのマルセル・ランデ(Marcelle Lender)だと言われています。
下の作品は1895年制作のリトグラフで、タイトルは《マルセル・ランデの胸像》、大きさは32.5 x 24.2 cm(第2ステート) です。
絵のモデルに関しては他の説もあるようですが、下の2作のマルセル・ランデに描かれた鼻梁がながくて少し反った感じからは女優のマルセル説に説得力があります。
ちなみに、マルセル・ランでの写真です。
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