《ロサ・インディカ・クルエンタ》のフォリオ判(右)とオクタヴヴォ判(左)
こんにちは。
みなさんは、ルドゥーテのバラの絵の展覧会をご覧になったことがありますか?
バラの愛好家はもちろんのこと、花好き、植物好き、ボタニカルアート好きの間で最も人気のある植物画は、ピエール・ジョゼフ・ルドゥーテの《バラ図譜》だと思います。バラと言えばルドゥーテ、ルドゥーテと言えばバラという感じですね!
ピエール・ジョゼフ・ルドゥーテはフランス革命期に王妃マリー・アントワネット、次いでナポレオン皇妃ジョゼフィーヌに仕えたベルギー出身の植物画家です。彼の代表作《バラ図譜》は植物図譜の金字塔とも言われて世界中に愛好家がいます。
日本でも毎年のように各地の美術館で展覧会が開催されていますよね。→ 今年は群馬県立近代美術館
ところで、ルドゥーテのバラの絵はいわゆる油絵とは違って、植物図譜(植物図鑑のようなものですね)として、技法で言えば版画で制作されたものです。そこで、ルドゥーテのバラ図譜を見ていると普段は聞きなれない言葉が出てきます。
その最たるものが、《フォリオ判》と《オクタヴォ判》という言葉です。この二つの違いを正確に知れば、ルドゥーテ・ワールドがぐんと広がりますよ。
美術館でのルドゥーテの『バラ図譜』展を2度企画しました!
私は美術館で開催の展覧会プロデューサーとして、これまで大規模なルドゥーテの《バラ図譜》の展覧会を2度企画オーガナイズしています。
2015年に長崎県歴史文化博物館で開催された《LES ROSES 宮廷画家ルドゥーテの『バラ図譜』》展と2015〜2016年に山梨県立美術館で開催された《花の画家ルドゥーテのバラ》展です。
どちらの展覧会もフォリオ判の『バラ図譜』169点(バラのリースの扉絵を含めると170点)を中心に、肉筆画やオクタヴォ判の『バラ図譜』も展示するヴァラエティに富んだ展覧会でした。
バラのリース(扉絵)
フォリオ判とオクタヴォ判
ところで、このフォリオ判とかオクタヴォ判って何なんでしょう・・・
ということで、今日はルドゥーテの『バラ図譜』のフォリオ判とオクタヴォ判についてわかりやすく、かつ正確にお話します。
ルドゥーテの「バラ図譜 』には2種類の大きさがあります。大きいのがフォリオ判、小さいのがオクタヴォ判です。
通常、美術館などの展覧会で展示されているのは大型のフォリオ判です。
フォリオ判は全紙サイズの紙を二つに折った大きさ(折数は1回)、オクタヴォ判は全紙を八つに折った(折数は3回)大きさのものです。
フォリオ判『バラ図譜』とオクタヴォ『バラ図譜』ができた訳
『バラ図譜』は最初大型のフォリオ版で出版され高評価を得ましたが、値段が高く王侯貴族しか購入できませんでした。
そこで、ルドゥーテはより手軽に購入できる小型のオクタヴォ判を出版したのです。
オクタヴォ判は好評を博し1824年、1828-30年、1835年の少なくとも3回出版されました。
『バラ図譜』のフォリオ判とオクタヴォ判の違いは大きさだけじゃない!
オクタヴォ判の2版、3版は『バラ図譜』の最大の特長であるスティップル・エングレーヴィング(点刻彫版法)による繊細な「点の集積」による表現が省略されており、美的価値はかなり劣ると言われています。
ところで、絵柄的にもオクタヴォ判はフォリオ判をそのまま縮小したものというわけではありません。
ルドゥーテは小さい画面に応じて微妙に構図を変えたり、蕾や葉の数を減らしたりと様々な工夫を凝らしています。
(注)スティップル・エングレーヴィング(点刻彫版法)
線を用いないで、点の集積により形と明暗を描き出す版画技法。
これって逆版なの?
フォリオ判とオクタヴォ判の違いの最も顕著な例は、黄色のバラ「ロサ・スルフレア」です。
フォリオ判ではバラの花が左向きなのに対してオクタヴォ判では右向きです。
私も初めてオクタヴォ判のロサ・フレアを見た時は、「これって、逆版じゃない?!」と焦ってしまいました。
いかがでしたか?
ルドゥーての『バラ図譜」のフォリオ判とオクタヴォ判の違い、なかなか奥が深いですね!
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