10月27日(日)のプロトマニア・アート・レクチャーのご案内です。
第65回
〜これまで誰も教えてくれなかった〜『絵画鑑賞白熱講座』
戦後美術、《抽象表現主義》のNo.1スター
悲劇の英雄 ジャクソン・ポロック
前回鑑賞したモンドリアンやマレーヴィッチの抽象絵画いかがでしたか?
グリッドと呼ばれる黒の垂直線と水平線で仕切られた画面に、赤・青・黄の三原色と黒と白という非色のみを厳格に配置したモンドリアンの《新造形主義》による抽象画、《絶対主義》の名のもとに白いカンヴァスに黒の正方形を描き、さらには白いカンヴァスに白の正方形を描いたマレーヴィチ、彼らの作品を見ると抽象絵画への道も極北に到達した感があります。
前回の講座でも、抽象絵画への道程はこの二人の抽象絵画で終わったのではないかと感じた方が多かったようです。
確かに、白地に白の正方形の先にはもう行きようがない気がしますね!
あるとしたら、マルセル・デュシャンが磁器製の男性用小便器に《泉》というタイトルをつけて作品としたレディ・メイドの顰にならって、画材屋で買った張りキャンヴァスを《傑作》という題名で作品にするくらいでしょうか・・・?
それは冗談として、実はまだまだ抽象画の道は続いていました。
それもスケールの大きい、とっても豊穣な世界が開けていたのです!
第二次世界大戦後のアメリカが生んだ《抽象表現主義》の絵画です!
モンドリアンやマレーヴィッチの理知的で幾何学的な抽象絵画は《冷たい抽象》と呼ばれますが、戦後アメリカの抽象表現主義は《熱い抽象》と呼ばれています。
抽象でありながら、人間の内面の激しい感情、祈り、人間存在の根源、行動などを画面に定着させるというまったく新しい抽象表現です。
この抽象表現主義の最初で最大のスターとなったのが、ジャクソン・ポロック(1912 – 1956)です。

《錬金術(Alchemy)》1947年 114.6×221.3cm
グッゲンハイム美術館
彼は巨大なキャンヴァスを床に広げて、そのまわりを(時にはキャンヴァスの上を)激しく往来しながら絵具《ドリッピング》という技法で有名ですが、この技法でできあがった画面は、彼の《描くという行為》の記録でもあり、絵具が複雑に重なり合ったマチエール(画肌)の画面は、自然に依拠したイメージによってではなく、その濃密な画面そのものから生命が誕生してくるような根源的な衝撃を見るものに与えます。
ポロックが戦後アメリカ美術最大のスターとなったのには、彼のこのような作品の力だけでなく、アルコール依存症に悩まされたあげく、制作にも行き詰まり、若い愛人と友人を巻き添えにした自動車事故により、44歳の若さでなくなったという伝説的な生涯も寄与しています。
また、ポロックがスターになれたのは彼の妻でやはり抽象表現主義の画家リー・クラズナー(1908 – 1984)のひたむきな支えがあったからでもあり、彼を高く評価することで自らも著名な美術批評家としての階段を駆け上がったクレメント・グリーンバーグがいたからでもあります。

ポロックとクラズナー
1950年
そんなポロックの伝説の生涯は、2000年に制作された《ポロック 2人だけのアトリエ》という映画にもなりました。エド・ハリスが監督・主演でクラズナーを演じたマーシャ・ゲイ・ハーデンはアカデミー助演女優賞を受賞しています。(映画の中でクラズナーと出会った時のポロックはかなり年かさの風貌ですが、実際には29歳の若者でした。とは言え、実際のポロックも禿頭で異常なくらい老けて見えるのでこの映画に違和感があるというわけではないのですが・・・そこは押さえておいた方がいいかも知れませんね)
次回10月27日の講座では、それまでの絵画の概念を変えたポロックの激しい画面から伝わってくるものとは何かをみなさんと話し合いながら、彼の伝説と実像の世界も味わいたいと思います。

《北斗七星の反射》
1947年 111 x 91.5 ccm
アムステルダム市立美術館

《One:Number31》
1950年 269.5×530.8cm ニューヨーク近代美術館(MoMA)

《インディアン・レッドの地の壁画》
1950年 244x183cm
テヘラン現代美術館

《収 (Convergence) 》 1952年 237x 393cm
オルブライト・ノックス美術館
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※ この講座は絵の知識を競うものではありません。絵を見る力が自然に身につく楽しい講座です。
※ いわゆる美術史の流れを知らなくても、その場で向き合った絵をどう感じたかどう見るか、そしてそれを どう自分の言葉にするかを「わいわいがやがや」 の 寺子屋スタイルで学びます。
※ 通史的な講座ではありませんので、いつからでも、興味のある画家の講座の時だけでも、 お気軽にご参加ください。
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講師: 中尾陽一
日程 : 2019年 10月27日(日) 13:00 〜 15:30 (途中休憩有り)
参加費: 4000円
場所 : プロトマニア
[東京メトロ九段下駅 3b 出口(北の丸スクエア)より徒歩2分]
〒102-0073 東京都千代田区九段北1-12-5 市田ビル6F
予約・お問合せ : お名前と日中のご連絡先を添えてメールまたはお電話でお申込みください。
e-mail: yoyoa@mac.com phone: 090-2469-4450(荒川)
※プロトマニアのHPからも簡単にお申し込みいただけます。
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中尾陽一
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