今回は、ナビ派の異端児フェリックス・ヴァロットンをとりあげます。
ヴァロットンは欧米に比べて日本ではほとんど知られていない画家でしたが、2014年に三菱一号館でわが国初の展覧会が開催されて以来大変人気が高まっています。
赤いボールを追う白い服の女の子の絵に不思議な感覚をもたれた方も多いのではないでしょうか?
ナビ派は、19世紀末のパリで印象派の自然再現的な絵画にあきたらなかった、当時の若い画家たちボナールやヴュイヤールが、ゴーギャンの教えに共鳴して結成した前衛的な芸術家集団です。ナビ派の大きな特徴のひとつは、日常的な情景を題材に家族間や友人間の「親密さ(アンティミテ)」を装飾的な画面に表現したことです。
ヴァロットンの絵にも、家族の情景を描いたものがたくさんあり、一見アンティミテを描いているようです。しかし、よく見るとそこには何か不穏な空気、アンティミテとは相容れない冷たさのようなものが感じられます。それはいったいなぜか?この入門講座でみなさんいと一緒に、ヴァロットンの絵画の鑑賞をしながら解明してみたいと思います。
講座は2部構成です。まず、ヴァロットンの代表作1点をVTS(Visual Thinking Strategies)というメソッドで鑑賞し、作品や画家に対する理解を深めます。VTSは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で開発された手法で、1枚の絵をグループの対話を通して鑑賞します。最近では、ビジネスや敎育の分野でも大変注目されています。
次に、ヴァロットンの初期から晩年まで、画風の変遷がわかる作品を20〜30点鑑賞します。当時の写真やエピソードをご紹介しつつ、みなさんの感想をヒントにして、ヴァロットン・ワールドへの扉を開きます。
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